小さなお子さんをもつ、お父さん・お母さん、暑くなってきましたね。 暑くなってくると、「熱中症」という言葉がよく話題になります。
お子さんが熱中症になってしまったら…と考えると、本当に心配ですよね。
大人は自分で体調の変化に気づいて予防できますが、小さなお子さんにはそれが難しいもの。だからこそ、周りの大人が「子どもの代弁者」となり、サインを見逃せず、正しい知識で守ってあげることが大切です。
この記事では、お子さんの熱中症について、親御さんが知っておくべき症状の見分け方から、具体的な予防策、そして万が一の時の対処法まで、分かりやすく丁寧にご説明します。この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が「大丈夫、私が見守ってあげられる」という自信に変わっているはずです。
熱中症にかかった子供の症状を教えて。
子どもの様子がいつもと違うとき、それが熱中症なのか、ただの疲れなのか、判断に迷うことがあります。ここでは、症状を重症度別に整理しました。いざという時に慌てず確認できるよう、ぜひ覚えておいてください。
症状は、体の水分・塩分バランスの乱れから始まり、頭痛や吐き気へ、そして最終的には最も重要な脳の機能にまで影響が及ぶ、という流れで深刻化していきます 。
危険度別の症状チェックリスト
軽症(I度):まずはおうちで対処 体の防御システムの第一線が揺らぎ始めた状態です。
- めまい、立ちくらみ
- 顔が赤くほてる
- 大量の汗をかく
- こむら返り、手足の筋肉が痛む
中等症(II度):病院の受診を検討 症状が体の中心部にまで及んでいる状態です。おうちでのケアで改善しない場合は、病院へ連れて行きましょう。
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 体がだるい、ぐったりしている(倦怠感)
- 体温が上がる(体温38℃前後)
重症(III度):迷わず救急車を! 司令塔である脳の機能に異常をきたしている、非常に危険な状態です。ためらわずに救急車を呼んでください。
- 意識がおかしい(呼びかけへの反応が鈍い、ちぐはぐな返事をする)
- けいれんを起こしている
- まっすぐ歩けない、体がガクガクする
- 体が非常に熱い(体温40℃以上)
- 汗をかいていない(暑いのに肌が乾燥している)
赤ちゃん特有のサインを見逃さないで
言葉で伝えられない赤ちゃんは、特有のサインでSOSを出しています。これらの変化は、眠たいだけ、機嫌が悪いだけ、と見過ごされがちですが、複数のサインが重なるときは特に注意が必要です。
- いつもより顔がほてっている
- 体に触れると熱い
- 泣き声が弱々しい、または泣かない
- おしっこの量が少ない(おむつが長時間濡れない)
- ぐったりして元気がない
- 母乳やミルクの飲みが悪い
- 嘔吐する
危険度別・症状チェックリスト
軽症(I度) | 中等症(II度) | 重症(III度) |
• めまい、立ちくらみ | • 頭痛 | • 意識障害(反応が鈍い) |
• 顔が赤い | • 吐き気、嘔吐 | • けいれん |
• 大量の汗 | • 倦怠感(ぐったり) | • まっすぐ歩けない |
• 筋肉痛、こむら返り | • 体温の上昇(体温38℃前後) | • 高体温(体温40℃以上) |
• 汗が出ない |
熱中症にならないように子供にしておく予防は?
熱中症対策で最も重要なのは、言うまでもなく予防です。まずは基本的な対策を徹底しましょう。
- 帽子を被らせてあげる
- 日陰で涼しい場所で過ごさせるようにする
- こまめに水分補給をする
これらの基本的な対策に加え、なぜ子どもに特別な配慮が必要なのか、そしてより効果的な予防法について深く理解していきましょう。
なぜ子どもは熱中症になりやすいの?
子どもは大人と体のつくりが違うため、熱中症のリスクが格段に高くなります。
- 未熟な体温調節機能:子どもの体は汗をかく機能が未熟で、体に熱がこもりやすい特徴があります 。また、体内の水分を保つ腎臓の機能も発達途中のため、脱水状態に陥りやすいのです 。
- 地面からの照り返しの影響:身長が低いため、大人が感じるよりもはるかに高温の環境(地面からの照り返し熱)にさらされています 。大人の顔の高さで気温が32.3℃の日でも、子どもの身長50cmの高さでは35℃を超えているというデータもあります 。
- 不調を伝えられない:乳幼児は「暑い」「のどが渇いた」と言葉で伝えられません 。遊びに夢中の子どもは、自分の体の変化に気づきにくいものです 。
予防の要!正しい水分補給の方法
「のどが渇いた」と感じた時には、すでに水分不足が始まっています 。渇きを感じる前に、こまめに水分を摂らせることが鉄則です。
- 普段の水分補給:日常生活では、糖分やカフェインを含まない「水(湯冷まし)」や「麦茶」が最適です 。
- 大量に汗をかいた時:屋外で長時間遊んだりスポーツをしたりした時は、水分とエネルギーを補給できる「スポーツドリンク」が適しています 。ただし、糖分が多いため日常的な摂取は避けましょう 。
- 脱水症状が見られる時:ぐったりしているなど、すでに脱水が疑われる場合は「経口補水液」を使いましょう。これは「飲む点滴」とも言われ、水分と塩分を最も効率よく体に吸収できるよう作られた治療目的の飲料です 。
日常生活に潜む「隠れ熱中症」に注意
熱中症は炎天下の屋外だけで起こるわけではありません。
- 蒸し暑い梅雨や夜間:気温だけでなく湿度が高い日も、汗が蒸発しにくく熱がこもるため危険です 。また、寝ている間にも汗で水分は失われるため、エアコンを適切に使い、夜間も注意が必要です 。
- ベビーカーや車の中:ベビーカーの中は地面からの照り返しで高温になりがちです 。そして、短時間でも子どもを車内に残すことは絶対にやめてください。車内温度はわずかな時間で危険なレベルまで上昇します 。
熱中症にかかった子供への対処法は?
どれだけ気をつけていても、熱中症になってしまうことはあります。万が一の時に備え、正しい対処法を知っておくことが、お子さんを重症化から守る最大の武器になります。
まずはおうちでできる応急手当
熱中症を疑う症状が見られたら、すぐに以下の応急手当を始めてください。
- 涼しい場所へ移動する:クーラーの効いた室内や、風通しの良い日陰など、すぐに涼しい環境へ移しましょう 。
- 衣服をゆるめて、体を冷やす:ベルトやボタンを外し、体の熱を逃がしやすくします 。濡らしたタオルで体を拭いたり、霧吹きで水をかけてうちわで扇いだりするのも効果的です 。特に、太い血管が通っている首の付け根、わきの下、足の付け根を保冷剤などで冷やすと、効率よく体温を下げることができます 。
- 水分と塩分を補給する:意識がはっきりしている場合は、水分と塩分を補給させます。経口補水液やイオン飲料が望ましいですが、なければ水やお茶でも構いません 。
病院へ行くべきか、救急車を呼ぶべきかの判断基準
応急手当をしても改善しない場合、どのタイミングで医療機関に頼るべきか、判断に迷うかもしれません。その基準を明確に示します。
すぐに病院へ行くべき症状
- 応急手当をしても症状が改善しない
- 水分を自力で摂れない、または何度も吐いてしまう
- 強い頭痛を訴える
- ぐったりして、ぼんやりしている
迷わず救急車を呼ぶべき緊急の症状 以下の症状は、命に関わる重症のサインです。一刻を争うため、すぐに119番通報してください。
- 呼びかけに反応しない、意識がはっきりしない
- けいれんを起こしている
- まっすぐ歩けないなど、体の動きがおかしい
- 体温が40℃以上ある
注意点: 意識がない、または朦朧としている状態で無理に水分を飲ませると、気管に入って窒息する危険があります。絶対にやめてください 。
受診・救急要請 判断の目安
すぐに病院へ | 迷わず救急車を |
• 応急手当で改善しない | • 意識がない・反応が鈍い |
• 水分が摂れない・嘔吐を繰り返す | • けいれん |
• 強い頭痛 | • まっすぐ歩けない |
• ぐったりしてぼんやりしている | • 体温が$40℃$以上 |
まとめ
小さなお子さんは、自分の体調の変化に気づきにくいものです。また、自分の気持ちや症状をなかなかうまく伝えられません。
いつも一緒にいる親御さんが、お子さんの体調の変化に気を配り、小さなサインに気づいてあげることが何よりも大切です。
熱中症は怖い病気ですが、正しい知識があれば予防でき、いざという時も冷静に対処できます。この記事で得た知識を「お守り」として、お子さんとの楽しい夏をお過ごしください。
※医学的な内容に関する注意書き 本記事は、子どもの熱中症に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。お子さんの症状に関して具体的な疑問や不安がある場合は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。この記事の情報を理由に、専門家による医学的な助言を無視したり、受診を遅らせたりすることのないようお願いいたします。
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